保険法

保険に入る前に読みたい法律「保険法」(2)

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第二章 損害保険

    第一節 成立

(損害保険契約の目的)
第三条  損害保険契約は、金銭に見積もることができる利益に限り、その目的とすることができる。
(告知義務)
第四条  保険契約者又は被保険者になる者は、損害保険契約の締結に際し、損害保険契約によりてん補することとされる損害の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第二十八条第一項及び第二十九条第一項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。
(遡及保険)
第五条  損害保険契約を締結する前に発生した保険事故(損害保険契約によりてん補することとされる損害を生ずることのある偶然の事故として当該損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)による損害をてん補する旨の定めは、保険契約者が当該損害保険契約の申込み又はその承諾をした時において、当該保険契約者又は被保険者が既に保険事故が発生していることを知っていたときは、無効とする。
2  損害保険契約の申込みの時より前に発生した保険事故による損害をてん補する旨の定めは、保険者又は保険契約者が当該損害保険契約の申込みをした時において、当該保険者が保険事故が発生していないことを知っていたときは、無効とする。
(損害保険契約の締結時の書面交付)
第六条  保険者は、損害保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一  保険者の氏名又は名称
二  保険契約者の氏名又は名称
三  被保険者の氏名又は名称その他の被保険者を特定するために必要な事項
四  保険事故
五  その期間内に発生した保険事故による損害をてん補するものとして損害保険契約で定める期間
六  保険金額(保険給付の限度額として損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)又は保険金額の定めがないときはその旨
七  保険の目的物(保険事故によって損害が生ずることのある物として損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)があるときは、これを特定するために必要な事項
八  第九条ただし書に規定する約定保険価額があるときは、その約定保険価額
九  保険料及びその支払の方法
十  第二十九条第一項第一号の通知をすべき旨が定められているときは、その旨
十一  損害保険契約を締結した年月日
十二  書面を作成した年月日
2  前項の書面には、保険者(法人その他の団体にあっては、その代表者)が署名し、又は記名押印しなければならない。
(強行規定)
第七条  第四条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者に不利なもの及び第五条第二項の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
    第二節 効力

(第三者のためにする損害保険契約)
第八条  被保険者が損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、当然に当該損害保険契約の利益を享受する。
(超過保険)
第九条  損害保険契約の締結の時において保険金額が保険の目的物の価額(以下この章において「保険価額」という。)を超えていたことにつき保険契約者及び被保険者が善意でかつ重大な過失がなかったときは、保険契約者は、その超過部分について、当該損害保険契約を取り消すことができる。ただし、保険価額について約定した一定の価額(以下この章において「約定保険価額」という。)があるときは、この限りでない。
(保険価額の減少)
第十条  損害保険契約の締結後に保険価額が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険金額又は約定保険価額については減少後の保険価額に至るまでの減額を、保険料についてはその減額後の保険金額に対応する保険料に至るまでの減額をそれぞれ請求することができる。
(危険の減少)
第十一条  損害保険契約の締結後に危険が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険料について、減少後の当該危険に対応する保険料に至るまでの減額を請求することができる。
(強行規定)
第十二条  第八条の規定に反する特約で被保険者に不利なもの及び第九条本文又は前二条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
    第三節 保険給付

(損害の発生及び拡大の防止)
第十三条  保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。
(損害発生の通知)
第十四条  保険契約者又は被保険者は、保険事故による損害が生じたことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。
(損害発生後の保険の目的物の滅失)
第十五条  保険者は、保険事故による損害が生じた場合には、当該損害に係る保険の目的物が当該損害の発生後に保険事故によらずに滅失したときであっても、当該損害をてん補しなければならない。
(火災保険契約による損害てん補の特則)
第十六条  火災を保険事故とする損害保険契約の保険者は、保険事故が発生していないときであっても、消火、避難その他の消防の活動のために必要な処置によって保険の目的物に生じた損害をてん補しなければならない。
(保険者の免責)
第十七条  保険者は、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じた損害をてん補する責任を負わない。戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。
2  責任保険契約(損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう。以下同じ。)に関する前項の規定の適用については、同項中「故意又は重大な過失」とあるのは、「故意」とする。
(損害額の算定)
第十八条  損害保険契約によりてん補すべき損害の額(以下この章において「てん補損害額」という。)は、その損害が生じた地及び時における価額によって算定する。
2  約定保険価額があるときは、てん補損害額は、当該約定保険価額によって算定する。ただし、当該約定保険価額が保険価額を著しく超えるときは、てん補損害額は、当該保険価額によって算定する。
(一部保険)
第十九条  保険金額が保険価額(約定保険価額があるときは、当該約定保険価額)に満たないときは、保険者が行うべき保険給付の額は、当該保険金額の当該保険価額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額とする。
(重複保険)
第二十条  損害保険契約によりてん補すべき損害について他の損害保険契約がこれをてん補することとなっている場合においても、保険者は、てん補損害額の全額(前条に規定する場合にあっては、同条の規定により行うべき保険給付の額の全額)について、保険給付を行う義務を負う。
2  二以上の損害保険契約の各保険者が行うべき保険給付の額の合計額がてん補損害額(各損害保険契約に基づいて算定したてん補損害額が異なるときは、そのうち最も高い額。以下この項において同じ。)を超える場合において、保険者の一人が自己の負担部分(他の損害保険契約がないとする場合における各保険者が行うべき保険給付の額のその合計額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額をいう。以下この項において同じ。)を超えて保険給付を行い、これにより共同の免責を得たときは、当該保険者は、自己の負担部分を超える部分に限り、他の保険者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
(保険給付の履行期)
第二十一条  保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、てん補損害額、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが損害保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。
2  保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故及びてん補損害額の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。
3  保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者又は被保険者が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。
(責任保険契約についての先取特権)
第二十二条  責任保険契約の被保険者に対して当該責任保険契約の保険事故に係る損害賠償請求権を有する者は、保険給付を請求する権利について先取特権を有する。
2  被保険者は、前項の損害賠償請求権に係る債務について弁済をした金額又は当該損害賠償請求権を有する者の承諾があった金額の限度においてのみ、保険者に対して保険給付を請求する権利を行使することができる。
3  責任保険契約に基づき保険給付を請求する権利は、譲り渡し、質権の目的とし、又は差し押さえることができない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一  第一項の損害賠償請求権を有する者に譲り渡し、又は当該損害賠償請求権に関して差し押さえる場合
二  前項の規定により被保険者が保険給付を請求する権利を行使することができる場合
(費用の負担)
第二十三条  次に掲げる費用は、保険者の負担とする。
一  てん補損害額の算定に必要な費用
二  第十三条の場合において、損害の発生又は拡大の防止のために必要又は有益であった費用
2  第十九条の規定は、前項第二号に掲げる費用の額について準用する。この場合において、同条中「てん補損害額」とあるのは、「第二十三条第一項第二号に掲げる費用の額」と読み替えるものとする。
(残存物代位)
第二十四条  保険者は、保険の目的物の全部が滅失した場合において、保険給付を行ったときは、当該保険給付の額の保険価額(約定保険価額があるときは、当該約定保険価額)に対する割合に応じて、当該保険の目的物に関して被保険者が有する所有権その他の物権について当然に被保険者に代位する。
(請求権代位)
第二十五条  保険者は、保険給付を行ったときは、次に掲げる額のうちいずれか少ない額を限度として、保険事故による損害が生じたことにより被保険者が取得する債権(債務の不履行その他の理由により債権について生ずることのある損害をてん補する損害保険契約においては、当該債権を含む。以下この条において「被保険者債権」という。)について当然に被保険者に代位する。
一  当該保険者が行った保険給付の額
二  被保険者債権の額(前号に掲げる額がてん補損害額に不足するときは、被保険者債権の額から当該不足額を控除した残額)
2  前項の場合において、同項第一号に掲げる額がてん補損害額に不足するときは、被保険者は、被保険者債権のうち保険者が同項の規定により代位した部分を除いた部分について、当該代位に係る保険者の債権に先立って弁済を受ける権利を有する。
(強行規定)
第二十六条  第十五条、第二十一条第一項若しくは第三項又は前二条の規定に反する特約で被保険者に不利なものは、無効とする。
    第四節 終了

(保険契約者による解除)
第二十七条  保険契約者は、いつでも損害保険契約を解除することができる。
(告知義務違反による解除)
第二十八条  保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、損害保険契約を解除することができる。
2  保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、損害保険契約を解除することができない。
一  損害保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
二  保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(保険者のために保険契約の締結の代理を行うことができる者を除く。以下「保険媒介者」という。)が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
三  保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
3  前項第二号及び第三号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第一項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。
4  第一項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から一箇月間行使しないときは、消滅する。損害保険契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。
(危険増加による解除)
第二十九条  損害保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、損害保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第三十一条第二項第二号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該損害保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該損害保険契約を解除することができる。
一  当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該損害保険契約で定められていること。
二  保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。
2  前条第四項の規定は、前項の規定による解除権について準用する。この場合において、同条第四項中「損害保険契約の締結の時」とあるのは、「次条第一項に規定する危険増加が生じた時」と読み替えるものとする。
(重大事由による解除)
第三十条  保険者は、次に掲げる事由がある場合には、損害保険契約を解除することができる。
一  保険契約者又は被保険者が、保険者に当該損害保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として損害を生じさせ、又は生じさせようとしたこと。
二  被保険者が、当該損害保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三  前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者又は被保険者に対する信頼を損ない、当該損害保険契約の存続を困難とする重大な事由
(解除の効力)
第三十一条  損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2  保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。
一  第二十八条第一項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
二  第二十九条第一項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
三  前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害
(保険料の返還の制限)
第三十二条  保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。
一  保険契約者又は被保険者の詐欺又は強迫を理由として損害保険契約に係る意思表示を取り消した場合
二  損害保険契約が第五条第一項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が保険事故の発生を知って当該損害保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。
(強行規定)
第三十三条  第二十八条第一項から第三項まで、第二十九条第一項、第三十条又は第三十一条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者に不利なものは、無効とする。
2  前条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
    第五節 傷害疾病損害保険の特則

(被保険者による解除請求)
第三十四条  被保険者が傷害疾病損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、保険契約者に対し、当該保険契約者との間に別段の合意がある場合を除き、当該傷害疾病損害保険契約を解除することを請求することができる。
2  保険契約者は、前項の規定により傷害疾病損害保険契約を解除することの請求を受けたときは、当該傷害疾病損害保険契約を解除することができる。
(傷害疾病損害保険契約に関する読替え)
第三十五条  傷害疾病損害保険契約における第一節から前節までの規定の適用については、第五条第一項、第十四条、第二十一条第三項及び第二十六条中「被保険者」とあるのは「被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、その相続人)」と、第五条第一項中「保険事故が発生している」とあるのは「保険事故による損害が生じている」と、同条第二項中「保険事故が発生していない」とあるのは「保険事故による損害が生じていない」と、第十七条第一項、第三十条及び第三十二条第一号中「被保険者」とあるのは「被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、被保険者又はその相続人)」と、第二十五条第一項中「被保険者が」とあるのは「被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、その相続人。以下この条において同じ。)が」と、第三十二条第二号中「保険事故の発生」とあるのは「保険事故による損害が生じていること」と、第三十三条第一項中「、第三十条又は第三十一条」とあるのは「又は第三十一条」と、「不利なものは」とあるのは「不利なもの及び第三十条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、被保険者又はその相続人)に不利なものは」とする。
    第六節 適用除外

第三十六条  第七条、第十二条、第二十六条及び第三十三条の規定は、次に掲げる損害保険契約については、適用しない。
一  商法(明治三十二年法律第四十八号)第八百十五条第一項に規定する海上保険契約
二  航空機若しくは航空機により運送される貨物を保険の目的物とする損害保険契約又は航空機の事故により生じた損害を賠償する責任に係る責任保険契約
三  原子力施設を保険の目的物とする損害保険契約又は原子力施設の事故により生じた損害を賠償する責任に係る責任保険契約
四  前三号に掲げるもののほか、法人その他の団体又は事業を行う個人の事業活動に伴って生ずることのある損害をてん補する損害保険契約(傷害疾病損害保険契約に該当するものを除く。)

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