調査

共済が生命保険よりも安くなる真の理由は、運営経費の節減ではなくて死差益(危険差益)だった

投稿日:2013年1月25日 更新日:

これまで、ネット生保よりも遥かに安い、史上最強の保険は「埼玉県民共済」一択や、最強の県民共済はどこなのか?「全39都道府県 県民共済比較ランキング」などの県民共済ネタについて何度か書いてきましたが、どうしても疑問だったのが、どうして「全年齢均一(18歳~60歳)」の掛け金と保障内容なのに、同じく営業職員を持たないはずのネット生保等と比べても安くなることが多いのかがずっと疑問でした。「共済事業は営利を目的としていないため」という説明もありますが、非営利企業と比べて営利企業は経費節減圧力が少ないためかえって高くつくという例は枚挙にいとまがなく、そうした単純化された「生命保険会社ボッタクリ論」には納得できませんでした。

それが、生命保険会社(特に、ライフネット)の決算発表や、生保会社の規制の歴史などを見ることでようやくわかったので、まとめてみたいと思います。

保険料=純保険料+付加保険料

まず、一般的に支払う保険料の中身について説明をすると、(1)現在および将来の保険金支払いのために使われる「純保険料」と(2)保険の運営経費のために使う予定の「付加保険料」を合算した額が、いわゆる「保険料」として月々支払う額となります。ライフネットが説明している図がわかりやすいので引用します。

ライフネットはかつて、この(1)純保険料を、保険の“原価”に相当するものだとして公表しました。こうした情報公開すら全く行ってこなかった保険業界において一気に話題を作り、知名度を向上させることに成功しました。その中で、ライフネットは営業職員や営業のための店舗を持たないために付加保険料を少なくすることができるため、大幅に保険料を引き下げることができるとアピールしていました。

県民共済も、営業職員や店舗をもたないリーンな経営

ところで、いわゆる「県民共済」も営業職員を持たずに、チラシと銀行の窓口販売だけで加入者を増やし続けてきました存在です。実際県民共済の公式ホームページでも、同社が事業資金の不足のために「プル型」戦略を導入せざるを得なかった旨、そして、それが低廉な掛け金につながったと説明されています。

生まれたばかりの県民共済には、加入者を募集するための事業資金がないので、止むなく保険の業界では不可能とされていた、勧誘なしの加入者募集に踏み切り、あさひ銀行(当時‥埼玉銀行)に、銀行の窓口経由で加入の申込書(兼口座振替依頼書)の受理をお願いすることにしました。

ということは、同様にプル型戦略をとる「ネット生保」と「共済」は同一の保障内容に対して保険金/掛け金がほぼ同一になってもおかしくないはずです。チラシなどの紙代や郵送費がかからない分、かえって安くなってもおかしくないはずです。

あらためて「県民共済」と「ネット生保」を比較する

前回のように「終身医療保険」と60歳で保障が終了してしまう「県民共済」を比較するのはフェアではないので、今回は「(10年)定期医療保険」と比較することにします。現在、ネット通販に力を入れている保険会社のうち唯一「定期医療保険」を提供しているネクスティア生命と比較してみましょう。

ネクスティア生命の、入院給付金(上限60日)と手術給付金がでるタイプである「カチッと医療」と比較します。

保険料は、当然年齢によって異なります。

これと、県民共済の死亡保障部分がほとんどついていない「入院保障型」と比較してみましょう。

県民共済の掛け金は、18歳〜60歳まで一律で月額2000円です。手術給付金が「一律10万円」のネクスティアと比べて、県民共済では「手術の程度によって 2.5万円〜10万円」とやや悪くなっていますが、そのかわり入院日額保障が60日ではなく124日~184日となっていますので相殺ということにして、「同一の保障内容である」とみなすことにします。なお先進医療保障や死亡保障などもついていますが、これらが保険料に与える影響は他社の水準から想像するに軽微です。

ちなみに、東京都の場合(都民共済ですが)は、平成23年度で「33.80%」が割戻金として戻ってきていますので、実質 1324円です。

さて、県民共済の場合は「年齢によらず掛け金が一定」となっており、保険の常識で言えば「年をとるほど高額になる」ので若い人にとっては不利であるといえます。そのため営業費用がほぼ同額であると考えるなら、「XX歳以下であれば生保のほうが安い」という状況がうまれてもおかしくありませんね。

一応、額面金額で比べると41歳以下であればネクスティアの医療保険の保険料のほうが安いと言えます。しかし、「割戻金」を考慮して考えると「カチッと医療」の加入年齢の下限20歳だとしても月額保険料は1340円となり、県民共済よりも割高になってしまっています。

すなわちどんな年齢層であっても、効率性を重視しているはずのネット生保であるにもかかわらず、コストパフォーマンスで県民共済に勝つことができないのです。

県民共済のほうが安いのは「営業にかかる費用が少ないから」?

http://wimg.netseiho.com/shared/pdf/insurance_table.pdf

さて、「県民共済は営業職員や店舗を持たないから営業費用がやすくすむ」という理由は、どこまで本当なのでしょうか?そこで、県民共済の元受団体(実質的な保険会社)である「全国生協連」の決算を覗いてみましょう。

火災共済などの「損保系」の事業が含まれてしまうことに目をつぶって、ざっくりと見ると、

  • 掛金による収入:5380億円
  • 保障のための支出:3060億円(再保険料・危険準備金引当含む)
  • 事業運営のための経費:660億円
  • 割り戻し金:1630億円
  • 税金:50億円

これによれば、掛け金に占める運営経費比率は約12%となっています。
ネクスティア生命やライフネット生命は、まだ成長フェーズのため広告宣伝費等に相対的に大きなお金をつっこんでいるため、それぞれの会社の決算を見ても「想定する運営経費」について知ることができません。そこで、“原価公開”したライフネットの付加保険料をもとに考えてみましょう。

保険料に占める付加保険料の比率が定常飛行時における「運営経費比率」だとみなし、かつ、ライフネット生命とネクスティア生命でもほぼ同一だという無茶な仮定に基づくと、ネット生保の医療保険に占める想定運営経費比率は20%~25%くらいであるといえます。

経費の比率は、たかだか10%の差しかないにもかかわらず、保険料の差において大きな差がついてしまうのでしょうか?

このカラクリは、保険の原価と言われている純保険料そのものにあったのです。続きます。

よりよい条件の保険を選ぶために

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